あなたは高浜虚子ですか

サーシャよ、覚えているかい。

下着の上から君の匂いを探るのが私はとても好きだった。

君の下着に残る洗剤と太陽の匂いと、その内側から滲み漏れてくる君自身の懐かしい匂い。それらが私の鼻腔の奥を突くたびに、原始的な喜びと幸福が私の心を満たしていたんだ。

君の匂いはその時々によって違った。君の匂いから若い酸味や芳醇な甘味を感じることもあったし、懐かしい潮の香りを感じることもあった。僕はそこから、君の膣の中に濃密な林檎の果実が潜んでいたり、どうしようも無く官能的な魚の卵が眠っているのだと想像したものだ。

あれからもう長い年月が経つ。君は幸せになっただろうか。僕はあれから何人かの情人と寝たが、君ほどの香りをまだ見つけることはできない。もうじきまた冬が来る。君の匂いは凍て付く空気の中に閉じ込められてしまい、僕はもうそれを味わうことはできなくなるかもしれない。

そんなことを、抱き合う女の汗ばむ体から放たれる淫靡な香りを感じながら思っていた。