お前の母さんには眉毛が無い

預けた体の重さは信頼の証だった。膝の上で眠る彼女を見て、この時間が続けばいいと思っていた。私は誰かに甘えたかったのでは無く、誰かに甘えられたかったのだと理解した。それは何故か。甘えるという行為は、少なくともそれを行っている間は、相手だけを見ているものだ。甘えられることによって私は自分の存在を再び思い出した。彼女の温かい体温や汗や舌の柔らかさや唇に塗ったリップのストロベリーの味やハンドクリームの質感、下着が可愛いでしょうと言って見せた微笑みや揃った前髪、チェルシーのヨーグルト味が一番好きなことや少しはにかむ仕草、それら数々を思い出すことで私はそのときに存在していた私自身を確認することができる。